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執筆者の写真Hideki Kobayashi

「うずらのロバート」は、現代では忘れられた暖かみが書かれていました。

更新日:2023年3月29日


うずらのロバート表紙
うずらのロバート表紙

 度々ブログでもご紹介しておりますが、今回「うずらのロバート」(マーガレット・A・ステンジャー(著)、堀内静子(訳))【秀英書房】について、ご紹介したいと思います。少し前の時代、アメリカを舞台としたお話です。


【あらすじ】


 アメリカのマサチューセッツ州ケープコッドに住むキーンツル夫妻が、巣立ちが終わったウズラの巣に残された卵を一つ拾ってきます。その卵が少し割れ始めると、夫妻は孵化を試み、成功させます。生まれたうずらに「ロバート」と名付けて、野生に帰すまでと心に決めて、飼育を始めました。ロバートは夫妻に懐き、とても仲良く過ごしました。そして、十分に成長したと夫妻は、一度ロバートを野生に戻そうとしました。しかし、結局ロバートは夫妻に付いて来てしまい、野生に帰すことは出来ませんでした。夫婦は、ロバートが自ら家を出るまで飼育を続けることに決めました。この本は、ロバートと夫妻の日常を、隣に住むマーガレットさん記録した内容となっています。


【書評】コリンウズラと人との暖かい繋がりが、ほのぼのとするお話です。


1962年、古き良きアメリカのニューイングランド地方のお話です。夫婦とロバートのやり取りが、本当に詳細に書かれていました。書内では、「うずら」と書かれていましたが、拾ってきた卵が「白」だったことから、うずらは「コリンウズラ」ですね。当初、ロバートを自然に帰す予定でしたが、やっぱり無理でした。コリンウズラは個性にもよりますが、ペットとして良く懐く鳥です。犬や猫と違い、自由な鳥が後ろに付いて来ると本当に「懐いてくれている」ことを実感することでしょう。


 この本は、コリンウズラの様子や仕草が本当に詳細に書かれています。私の感覚では、少し過剰ではないかと思えるくらいです。しかし、時代と言う物を考えてみました。1962年と言えば、日本では高度経済成長期真っ只中、アメリカはベトナム戦争中でした。アメリカではテレビ普及率が90%を超えた程度です。ようやくテレビが娯楽として成立し、人々は情報をテレビから得るようになりました。しかし、まだまだ娯楽は少なく、当然情報は口伝えや書籍に依存したことでしょう。時代背景を考えると、うずらの振る舞いや様子は人々の興味の対象であり、楽しみの一つだったのでしょう。


 夫妻はロバートを家の中で飼育しました。鳥を家の中で飼育すると、必ずフンが問題になります。しかしロバートは大変お行儀が良く(?)、フンはバスルームで落として、部屋には落とさないと書かれていました。ここまでコリンウズラが躾けられるとは驚きです。バスルームで済ませてくれるなら、掃除も簡単ですね。また、人の肩に留まったり、手の中に飛び込んだりと、コリンウズラとしては考えられないくらい懐いている様子でした。ある意味、コリンウズラのペットとしての才能は、インコに劣らないと思いました。多分、1羽で飼育していたことが、良く懐いた要因の一つでしょう。もちろん、ロバートに対する夫妻の対応も重要だったでしょう。病気になったロバートを治療するなど、本当に愛情を込めてロバートと生活していました。コリンウズラをペットとして懐かせたい方には、大変参考になるでしょう。


 ちなみにロバートはメスでした。表紙の絵は、オスのように描かれていますが、ある時判明します。私は本の中で「雄叫び」について書かれていなかったので、途中からメスじゃないかと思っていました。コリンウズラのオスなら、必ず大きな声の雄叫びについて書かれることでしょう。コリンウズラの愛称は「Bob White!(ボ・ブ・ホワイト!)」なのですから。メスも時々「Bob White」と鳴きますが、オスとは比べものにならないほど小さな鳴き声です。夫妻は、ロバートとの別れをいつも話し合っていました。ロバートが大人になって出ていくこと、オスと結婚して、出ていくこと、仲間を見つけて出ていくことなどです。そして、本の最後はお別れで終わります。どのようなお別れだったのか、本をお読みいただきたいと思います。しかし、良い思い出となったロバートとの日々は、夫妻に幸せをもたらしたことは間違いありません。


 現在、インターネットが整備され、1クリックで様々な情報を簡単に得られます。もちろん、うずらに関する情報も同様です。さらに映像などを通して、うずらがどのような鳥か、なども分かります。しかし、うずらのロバートを読んだ時、詳細に表現されたうずらの様子は、飼育した人だけが共感できる内容も含まれていました。こと生物に関しては、1クリックで得られる情報は、内容が何であれ、1クリックの重さしかありません。やはり、生き物を実際に飼育して、愛情を注ぐ中で得られる体験と感動は、インターネットからは、得られないでしょう。皆さんもコリンウズラ・ヒメウズラを飼育してみませんか?





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