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父島で発見された磁石にくっつく不思議な微生物のお話

 磁石と生物の関係は、まだ多くの不明な点があります。特に強い磁力を含む電磁波は、人の健康に悪影響を及ぼすことが提唱されています。WHO(世界保健機関)は、高圧線の電磁波で、小児白血病のリスクが上昇することを認めています。また電磁波の健康被害は、人によって差異があるようです。例えば、弱い電磁波にさらされても、何かしらの体調不良を訴える人もいます。この症状は「電磁(波)過敏症」と呼ばれます。ただ、自分が電磁波過敏症であることを知らず、高圧電線の近くに住んでしまうと、「なんとなく体調が悪い。原因はよくわからない。」という状況になります。その場合、医師に診てもらっても、原因不明のまま対処療法による治療となります。電磁波過敏症の場合、皮膚のかゆみや発疹など、神経衰弱、自律神経失調症などが現れるそうです。引越しの際、近くに高圧電線があるか否かを下調べしておきましょう。しかし、なぜ電磁波が人体に影響を与えるのか?についてはわかっていません。

磁石にくっつくのは砂鉄だけではないようです。
磁石にくっつくのは砂鉄だけではないようです。

様々な生物に影響を与える磁石

 

 磁石から出る磁力線は、X線と同じで目に見えません。そのため、磁力線が当たっているのか?わかりません。小学生にとっても磁石の影響に興味があるようで、アリと磁石の関係について、夏休みの自由研究が行われていました。トマトも磁石を避けて育つことが知られています。磁石から出てくる磁力線は、多かれ少なかれ生物に影響を与えるようです。

 

磁石に反応する微生物

 

 生物と磁力線の関係は、まだわかりません。もっとも単純な生物である細菌の中に、磁石の磁力線に反応して磁石にくっついたり、はじかれたりする性質を持つものがいます。磁石に反応する細菌は、磁性細菌と呼ばれています。生物と磁石の関係を考える上で、複雑な高等生物を対象とするより、単純な細菌を対象とした方が研究しやすいです。また、細菌で得られた知見は、人を始めとした高等生物に応用できるでしょう。

 

 磁性細菌は、沼地や湖沼、ダム湖などの水が貯められている所で見つかることが多いです。ほとんどは培養が難しい細菌ですが、ごく一部の磁性細菌は培養に成功しています。磁性細菌を電子顕微鏡で観察した結果、磁性細菌は菌体内にナノスケールの極小磁石を作っていることが明らかになりました。このナノスケール極小磁石の働きにより、磁性細菌は磁石に反応することがわかっています。

 

 磁性細菌が作り出すナノスケール極小磁石は、様々な形があります。また、そのほとんどが複数のナノスケール極小磁石を作り出し、菌体内部で整列して存在しています。このナノスケール極小磁石の形や並び方で、磁石に対する反応が変化します。ナノスケール極小磁石の形や並び方は、磁性細菌がどのように進化してきたのかを知る重要な情報であり、また生物と磁石の関わりの始まりについて、示していると考えられます。

 

父島で発見された新規磁性細菌について

 

 父島は日本列島から遠く離れた場所にあり、「東洋のガラパゴス」と呼ばれています。ガラパゴス諸島は、独自の生態系が構築され、他には見られない動植物が生存しています。父島はアメリカ人や日本人が住んできましたが、森には人の手が入らない場所が多々あります。その結果、父島にもまた独自の生態系が構築されていると予想されます。

 

 今回発見された磁性細菌は、菌体内のナノスケール極小磁石が整列していないという非常にユニークな新規の磁性細菌でした。父島の隔離された環境は、まだまだユニークな細菌が存在しているかもしれません。より多くの微生物研究者が父島に興味を持ってくれれば、バイオリソースとしての父島の重要性が増すことでしょう。

 

 父島由来の磁性細菌は培養に成功しています。ナノスケール極小磁石は工学的な応用が期待されていて、そのためにはより多くの磁性細菌が必要です。父島由来の磁性細菌は大量培養とまではいきませんが、ほとんどの磁性細菌の培養が困難な中、重要な磁性細菌であることは間違いありません。これからの磁性細菌研究の発展を期待しています。

 

 
 
 

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